なぜ採用や集客がうまくいかないのか?企業の発信が独りよがりになる理由
「うちは社員を大切にしている」「この仕事には大きなやりがいがある」「当社の商品はここが優れている」。採用サイトやSNS、企業の紹介動画では、こうした言葉をよく見かけます。
どれも企業側にとっては事実かもしれません。しかし、それを見た求職者や顧客が同じように受け止めるとは限りません。自社の魅力を伝えているつもりでも、相手にとって知りたい情報になっていなければ、応募や購入には結びつきにくいのです。
採用と集客は別の活動ですが、共通する落とし穴があります。それは、発信の出発点が「自社が伝えたいこと」になってしまうことです。
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「いい会社です」だけでは、応募する理由にならない
社員が会社を誇りに思うことは、素晴らしいことです。ただ、長く働いてきた人の実感を、そのまま初めて会社を知った人に伝えても、同じ熱量で理解してもらうのは難しいでしょう。
例えば、社内で「風通しの良い職場」と評価されていても、求職者が知りたいのは、入社後に誰へ相談できるのか、未経験でも質問しやすいのか、上司との距離感はどうなのか、といった具体的なことかもしれません。
「若手が活躍できる」という言葉も同様です。実際に任される仕事、研修期間、入社数年後の働き方が分かって初めて、自分にも当てはまる話として受け止められます。
伝えるべきなのは、魅力を表す形容詞だけではなく、相手が判断に使える事実です。
好きだから選ぶのか、経験してから好きになるのか
ここで考えたいのが、「好きだから入社するのか。それとも、入社して経験を積むうちに会社を好きになるのか」という問いです。
もちろん、以前から憧れていた企業に入社する人もいます。商品が好きで購入を決める人もいるでしょう。ただし、企業への愛着や商品の評価には、実際に働くこと、使うことによって深まる部分があります。
例えば、今使っているスマートフォンに満足している理由には、機能の説明だけでなく、毎日触れてきた使い慣れた感覚や、過去の利用体験も含まれているはずです。一方、まだ使ったことのない人は、同じ体験を持っていません。
採用でも同じです。社内の人が「この会社は本当にいい」と感じる根拠の一部は、入社後に得た経験です。求職者はその経験をまだ持っていません。
つまり、入社前の人に、入社後の社員と同じ愛着を最初から求めることはできません。
まず必要なのは、好きになってもらうための熱い言葉よりも、「ここなら働けそうだ」と判断できる情報です。

採用と集客に共通する「視点のズレ」
この問題は採用だけではありません。商品やサービスの集客でも、企業は機能や性能、開発へのこだわりを詳しく説明しがちです。しかし顧客は、まず自分の困りごとが解消されるのか、費用に見合うのか、導入後に何が変わるのかを知りたい場合があります。
例えば、動画制作会社が「高性能なカメラを使っています」と伝えても、発注担当者の不安は必ずしも解消しません。知りたいのは、誰に何を伝える動画になるのか、社内でどれほど準備が必要か、制作後にどう活用できるか、といったことでしょう。
企業の強みを語ることが悪いわけではありません。問題は、その強みが相手にとってどんな意味を持つのかが、説明されていないことです。
自社目線の「伝えたい情報」を、相手目線の「判断に必要な情報」へ翻訳する。この作業が欠けると、発信量を増やしても成果につながらない可能性があります。

発信を始める前に確認したい5つの問い
では、採用サイトやSNS、動画の企画を考えるとき、何から整理すればよいのでしょうか。少なくとも、次の5点は確認しておきたいところです。
1. 誰に届ける情報なのか
新卒・中途、経験者・未経験者など、相手の立場によって必要な情報は異なります。幅広い人に届けたい場合も、まず代表的な対象者を想定します。
2. 相手は今、何を知らないのか
社員には当たり前でも、初めて接する人には分からないことがあります。仕事内容、勤務時間、研修、商品利用の流れなど、判断を妨げる情報不足を探します。
3. 何を不安に感じているのか
求職者なら職場との相性や未経験への不安、顧客なら費用や失敗のリスクなどが考えられます。実際の不安は、面接での質問、営業現場の声、問い合わせ内容から確かめる必要があります。
4. その情報を、どの接点で届けるのか
SNSで初めて会社を知る人もいれば、求人媒体や説明会で関心を持った後に、SNSや採用サイトを確認する人もいます。接点ごとに役割を分けて考えます。
5. 見た後、どんな判断や行動をしてほしいのか
仕事内容を理解してほしいのか、募集要項を確認してほしいのか、問い合わせへの不安を減らしたいのか。期待する変化が決まれば、発信する内容も絞りやすくなります。

内部の人間だけでは、気づきにくいことがある
自社のことをよく知っているのは、当然ながら社内の人です。一方で、詳しく知っているからこそ、初めて接する人がどこで疑問を持つのかを想像しにくくなる場合があります。
「研修が充実している」「業界では有名な会社だ」といった説明も、その前提を共有していない人には伝わりません。社内の会議で違和感が出なかった表現でも、外から見ると意味が曖昧なことがあります。
だからこそ、外部パートナーの価値は制作業務の代行だけではありません。企業が当たり前だと思っている前提を問い直し、相手の視点で情報を組み立てることにもあります。
ただし、外部に任せれば必ず正しい答えが出るわけではありません。現場の事実を確認し、求職者や顧客の反応を見ながら、仮説を修正していくことが必要です。
伝え方を考える前に、相手の判断を考える
採用や集客がうまくいかない理由は一つではありません。募集条件や商品の競争力、認知の不足、応募・購入までの導線など、複数の要因が重なります。発信の改善だけで解決できない場合もあります。
それでも、「自社が何を言いたいか」から「相手は何を知れば判断できるか」へ視点を変えることは、施策を見直す重要な出発点です。
緋乃株式会社では、動画制作やSNS運用の依頼を受ける際にも、最初に採用・集客上の課題と、情報を届ける相手を整理することを重視しています。何を発信すればよいかが決まっていない段階から、社外の視点で一緒に考えることが可能です。
まずは制作する動画や投稿本数を決める前に、自社の魅力が相手の判断材料として届いているかを確かめてみてはいかがでしょうか。
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