企業TikTokは再生回数が伸びれば成功なのか?目的から考えるSNS運用のKPI設計
「先月は再生回数が大きく伸びました」
企業のSNS運用報告では、こうした数字が成果として紹介されることがあります。再生回数は変化が分かりやすく、社内にも説明しやすい指標です。広告費を使わずに多くの人へ動画が届けば、運用担当者としても手応えを感じるでしょう。
しかし、企業がTikTokを運用する目的は、再生回数そのものを増やすことなのでしょうか。
若手人材を採用したい。商品やサービスを知ってほしい。問い合わせを増やしたい。こうした目的があるなら、再生回数の先で何が起きたのかまで確認する必要があります。
目次
再生回数は大切だが、事業の成果と同じではない
再生回数を軽視する必要はありません。そもそも動画が見られなければ、企業の存在や魅力を知ってもらう機会は生まれにくいからです。特に認知拡大を目的とする運用では、視聴されること自体に意味があります。
問題は、再生回数を最終的な成果指標として扱ってしまうことです。
たとえば、採用を目的とする企業アカウントで、面白い企画が100万回再生されたとします。それは多くの視聴機会を得たという点で評価できます。ただ、その視聴者の中に採用対象者がどの程度いたのか、社名を覚えてもらえたのか、仕事内容への理解が深まったのかは、再生回数だけでは分かりません。
逆に、再生回数がそれほど多くなくても、採用対象者に届いて企業理解が進み、応募につながる動画もあり得ます。
動画の再生回数は、認知の機会を示す指標の一つです。採用数や問い合わせ数と同一視すると、何を改善すべきか見誤ります。

TikTokで何を実現したいのかによって、KPIは変わる
KPIとは、目標に向けた進捗を確認するための指標です。企業TikTokでは、最初に事業上の目的を決め、その目的に沿ってKPIを組み立てます。
企業認知を広げたい場合
まだ自社を知らない人に存在を知ってもらうことが目的です。再生回数に加え、利用可能なリーチ指標やプロフィール閲覧、指名検索の傾向などを確認します。
ただし、企画だけが話題になっても、企業名や事業内容が記憶されなければブランドとしての蓄積は限定的です。何を見せるかだけでなく、「誰が発信した動画なのか」が伝わる設計も必要になります。
採用につなげたい場合
採用目的なら、社名の認知から仕事内容の理解、求人情報の確認、応募までを考えます。
SNSから採用ページへのアクセスが増えているのに応募が少ない場合、動画の再生回数だけを改善しても結果は変わらないかもしれません。給与や勤務条件、仕事内容、職場環境、応募方法など、採用ページで提供している情報を見直すべき場合もあります。
集客・問い合わせにつなげたい場合
集客を目指す場合は、ターゲットへの接触だけでなく、Webサイトへの訪問、問い合わせ、予約、来店などを確認します。
ただし、TikTokを見た人が後日Googleで企業名を検索したり、別の媒体を経由して問い合わせたりすることも考えられます。SNSからの直接流入だけで施策全体の効果を判断しない姿勢も必要です。

事業課題をTikTokだけで解決できるとは限らない
企業のマーケティングでは、複数の施策が連動して初めて成果につながることが少なくありません。
たとえば、製造業の若手採用を考えてみます。TikTokで社員の人柄や職場の雰囲気を伝えれば、これまで接点のなかった求職者の関心を生み出せる可能性があります。
しかし、興味を持った人が採用サイトを訪れても、業務内容が分からない、勤務条件が見つからない、応募方法が複雑、といった状態であれば、その関心が応募に結びつくとは限りません。
同様に、SNSで商品を知った人が公式サイトへ進んでも、価格や導入事例が不足していれば、問い合わせに至らないことがあります。
ここで見直すべきなのは、必ずしも動画の企画や編集ではありません。SNSとWebサイト、求人情報、営業活動などがどのようにつながっているかという、施策全体の設計です。
成果を出すためには、施策の前に全体戦略が必要になる
TikTokは目的を実現するための手段の一つです。したがって、投稿本数や企画を決める前に、まず事業課題を整理する必要があります。
「応募が少ない」という課題であれば、そもそも企業の存在を知られていないのか、興味はあるが仕事内容が伝わっていないのか、応募条件が合わないのかによって打ち手が変わります。
認知不足が中心なら情報発信の強化が候補になります。一方、応募途中での離脱が多いなら、求人ページや応募フォームの改善を優先すべきかもしれません。
こうした判断をせずにTikTokだけを運用すると、数字は伸びても事業の課題が残ることがあります。

全体戦略というと大掛かりなものに聞こえるかもしれません。しかし、考える順番は明確です。事業上の目標を定め、現状との差を把握し、課題の所在を見極め、必要な施策を選び、それぞれの指標で改善していく。この順番を共有するだけでも、SNS運用の判断は変わります。
社内だけで全てを担うことの難しさ
実際の運用では、動画の企画・撮影・編集に加えて、SNSの分析、採用や営業の理解、Webサイトの改善、他媒体との連携まで考える必要が出てきます。
これらはそれぞれ異なる専門性を持つ業務です。専任者を置きにくい企業が、すべてを社内で高い水準に維持するのは簡単ではありません。
外部の支援会社を活用する価値は、制作の手を増やすことだけではないと考えています。複数の企業・業界を支援してきた経験を踏まえ、自社だけでは見えにくい課題を整理し、優先順位を判断できることにも意味があります。
緋乃株式会社では、動画制作やSNS運用を出発点にするのではなく、採用・集客・企業認知といった目的を伺い、必要な情報発信と施策の組み合わせを検討します。動画制作だけで十分な場合もあれば、SNS運用とWebサイトなどの改善を並行して進めるべき場合もあります。
TikTokの再生回数が伸びたかどうか。それは確認すべき数字ですが、企業にとっては最終的な問いではありません。
「事業上の目的に近づいているか」「近づいていないなら、どこに課題があるのか」。その判断ができて初めて、再生回数という数字も次の施策に生きてきます。
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